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公務員時代の大変だった話:市営住宅のできごと

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私が公務員だった頃、普通の日々の中に混じって何組かの「異常な日々」がありました。それらは一部だけがとても鮮やかに記憶に残っています。こうした経験は私にとって、ただの出来事以上のものであり、それぞれが私の人生観や働き方に深く影響を与えてきました。これらの経験は時には辛いものであったけれど、それらを経ることで得た洞察や教訓は私を成長させてくれました。

その中でも、心に刻まれている経験がある特別な日があります。それは、私が市営住宅の管理を担当していたとき、入居者の遺体を発見した日です。それは私にとって初めての死に直面した瞬間であり、公務員としての業務の一環とはいえ、その現実は重く、厳然としたものでした。

この記事では、その日の出来事とその後の経緯をお話しして、それがどのように私の仕事や人生観に影響を与えたかを共有したいと思います。そして、これが一人でも多くの人にとって、人間の生と死、そして私たちが生きていく上でどのような視点を持つべきかについて考えるきっかけになれば幸いです。

1 事件発覚:市営住宅での驚愕の発見

ある日、私の業務はいつもと違うスタートを切りました。通常の業務の一部として、私は市営住宅の管理を担当しており、その日は特定の住宅の定期チェックのため、現地を訪れる予定でした。その入居者には何度も電話をかけていましたが、一向に反応がありませんでした。そのため、物事を進めるためには直接現地へ行く必要がありました。

現地に到着すると、何かがおかしいことにすぐに気付きました。まず、窓からは異常なほどのハエが飛び交っていました。それは異様な光景であり、同行していた先輩と私はその場に立ち尽くすことしかできませんでした。次に、扉を開けるとあまりにも強烈な臭いが部屋から立ち上ってきました。その瞬間、私は驚きとともに事態の真実に直面しました。

部屋の中央には、数日間以上もの間その場に放置されていた男性の遺体が横たわっていました。部屋はハエで溢れ、羽音がとぎれることなく鳴り響いていました。男性の周囲には、彼の生活がそのまま残されており、その様子からは孤独な最期を迎えたことが伺えました。それは私にとって、生活の一部として働いてきた市営住宅が、ある人間の生と死の現場に変わっている様を目の当たりにした瞬間でした。

事情徴収:初めての警察対応

私が室内の様子をうかがっている間、先輩が警察に連絡を取っていました。警察が到着すると、彼らは素早く現場を制御しました。このような状況に直面したのは初めてだったので、私はただただ彼らがやっていることを見て学ぶしかありませんでした。幸い私自身が疑われることはなく、彼らは私から事情を聞き、遺体が発見された状況について記録を取りました。

これが私の初めての警察との接触で、その形式的で専門的な態度に感心しました。彼らは死体の扱い、現場の保全など、あらゆる手順をきちんと踏んでいました。そのプロフェッショナリズムに敬意を表しつつ、私自身も彼らから学ぶことができたのです。

この経験は、私にとって大きな学びとなりました。人間が死に直面した時、その瞬間には無数の手続きが必要となること、そしてそれがどれも重要であることを理解するきっかけとなりました。それは、私の公務員としての視野を広げ、新たな課題と向き合う準備を整える手助けとなりました。

現場清掃:遺品整理から住宅のリニューアルまで

遺体発見から数日後、警察の調査と事情徴収が終わると、私の役割が本格的に始まりました。それは遺品整理と、その後の住宅の清掃、そして次の入居者が居住できるように内装を修繕することでした。

遺品については、遺族の意向でほとんどを処分することとなりました。地元の清掃業者と協力して、家財道具を処分しました。この中で最も困難だったのは、布団と畳の処分です。これらは遺体の腐汁を吸っており、その臭いは強烈で、運び出すのも困難でした。

遺品整理が終わった後、住宅の清掃に取り組みました。ハエの死骸を片付け、鋭い腐敗臭が漂う部屋をきれいにする作業は、私にとってかつてない体験でした。しかし、清掃が完了すると、あたりに残る死臭を除けば、その家はもはや普通の住宅と変わらなくなりました。その変貌ぶりには驚かされました。

最後に、内装の修繕に取り組みました。ご遺体があった部屋については、床・壁・天井すべてをはがして施工しなおすことにしました。私が依頼した2社のうち1社が辞退したため、残りの1社に依頼することになりました。特に難航したのは、柱に張り付いた頭皮の処理です。最終的に、柱を全体的に削った上で新たな化粧板を張る方法を取りました。

それらの経験は、私にとって一生忘れられないものでした。それは、人間が死に向き合うことの深遠と、その一方で私たちが生きていくためにどれほどの労力が必要なのかを再認識させる経験でした。

影響:仕事へ、人生観への影響

この一件は私にとって、衝撃的な体験であり、働き方だけでなく、人生観にも大きな影響を与えました。

仕事面では、以後、私は死や火災、災害などのトラブル処理の業務を任されることが多くなりました。これは、私が既に最悪の現場を経験しているため、その後の現場でどんなことがあっても動じないという信頼を得たからだと思います。

一方、人生観については、人間の死や孤独について深く考えるきっかけとなりました。それまで自分の死はあまり考えていなかった私ですが、この事件以降、死を身近に感じ、自分が一人で老いていくことの恐ろしさを痛感しました。その結果、一人身で生きていくのではなく、家族を持つことの大切さを改めて感じるようになりました。

思い返すとこのような変化は、私の人生の大きな転換点となり、今の私を形成するのに一役買ったと言えるでしょう。

現在の反映:公務員時代の経験が今に生きる

公務員時代の経験は私の現在にも大きく影響しています。当時の経験を通して獲得した精神的な安定性とストレス耐性は、今の職場でも大いに役立っています。一見困難に見える状況でも、以前の経験を思い返せば、「これほどのことはない」と自分自身を落ち着かせることができます。

また、公務員時代の経験は私のプライベート面にも影響を及ぼしています。人間の一生と死、そして孤独を直面した経験から生まれた「家族を持ちたい」という価値観は、私が家族を持つことを決意する一因となりました。その結果、私は結婚し、愛する人と家族を形成することができました。

このように、公務員時代の経験は今でも私の心と行動に大きく影響を与えており、それは私がこの社会で生きていく上での重要な支えとなっています。

まとめ:振り返りと学び

この公務員時代の経験は、私にとって人生の中で忘れられない教訓をもたらしました。それは人間の生と死、そして孤独について深く考え、自身の人生観を見つめ直す機会を提供してくれました。私たちは普段、生活の中で死や孤独をあまり意識することはありませんが、これらは我々の生活の一部であり、人間の本質的な要素です。

また、現場で直面した難題やストレスは、私の精神的な強さを試す機会でもありました。それらを乗り越えることで、自分自身の特性を再確認することができました。また、これらの経験が今の私の生活にも活かされており、どのような困難な状況に直面しても、冷静に対応できる精神的な耐性を獲得することができました。

そして最も大きな影響は、自分の人生観への変化です。一人で生きていくことの難しさと孤独を理解し、人間のつながりの大切さを実感しました。それが私の「家族を持つ」という新たな価値観の形成を助け、今の幸せな家庭生活へと繋がったのです。

私たちの人生は、様々な経験の積み重ねによって形成されます。そして、それぞれの経験が私たちの人生観を豊かにし、人としての成長を促します。この経験を通して、私は人間の生と死、孤独とつながり、そして自分自身について深く理解することができました。それは私の人生の中で価値ある学びとなり、これからも私の行動と選択を導く道しるべとなるでしょう。

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